歴史

2016年11月 7日 (月)

宮本武蔵が佐々木小次郎と戦ったときに、舟の櫂を使った理由(推定)


Banner_713x90



宮本武蔵と佐々木小次郎が巌流島で決闘をしたときの話は諸説ありますが、大河ドラマでは船の大きな櫂(かい)を使っていました。
宮本武蔵は剣豪ということで、あんなに大きな櫂を振り回せると仮定すると、物理的な観点から、船の櫂を使うことの利点が見えてきます。

まず第1の理由として、一番多く解説されているのは、佐々木小次郎の長い刀に対抗するために、通常の長さの刀では相手に届かず勝ち目がないから、長い櫂を使ったというものです。

そして第2の理由として、これは持論なのですが、刀と大きな櫂との重さの違いがあります。小次郎の刀も十分に重いものですが、大河ドラマで見たような大きな櫂は、それよりも遥かに重そうでした。一撃で相手を倒すことに賭けて、相手に思いきり振りかざせば、刀と櫂との運動量(※)の違いで、たとえ相手が櫂を刀で受けたとしても、そのまま押しきって相手に致命傷を与えることができます。

櫂の運動量 p は、櫂の重さを m, 櫂の速さを v とすると、

   p = mv

で表されます。つまり、運動量は重さと速度に比例します。

これを踏まえて運動量保存の法則に従って考えると、大きな運動量で向かってくるものを、それよりも小さな運動量のもので受け止めることはできません。
武蔵はそのことを経験から直感的に理解していて、舟の櫂を使うことを考え、そして最初の一撃に賭けたのではないでしょうか。
また、重さではなく運動量として考えることにより、もし仮に櫂が軽かった場合は、その分速く振り回せるので、運動量が大きくなるため破壊力が大きくなります。これは銃の弾丸も同じです。

そして、櫂の長さが長くなるほど、振りかざしたときの先端の速度(角速度)は速くなるため、破壊力も大きくなります。(古代の武器である投石器もこの原理を利用したものです。)

ただ、重くなるほど向きを変えるのが遅くなるため、前にも述べましたが、あくまで最初の一撃に賭けて勝負することが条件となる戦法です。

私が思うには、上から振りかざすと左右に避けられたときに後が続かなくなるので、野球のバットのように水平に振ったのではないでしょうか。人間の体は縦長なので、上から狙うよりも横から狙った方が、当たる確率は大きいし受ける方も避けにくくなります。

ここで、櫂を刀で受けたときに、木製の櫂が刀で切られてしまわないのかという疑問があるかもしれませんが、最初から櫂を一刀両断するという強い意思を持って切らない限り、刀で受けただけでは小次郎といえども刀で木が切れるものではないでしょう。仮に小次郎が櫂を受けたときに分断または折ることができたとしても、分断されたあとの櫂が慣性の法則によって小次郎を直撃することになります。



(※)実際は、櫂の動きは武蔵の手の付近を中心とした円運動となるため、正確には角運動量として考える必要があり、また細長い物体の形状として扱い重心の位置などを考慮する必要がありますが、重い方が有利なことを理解する上では運動量だけ考えれば十分でしょう。

 

 

 

 

 

無料ブログはココログ