自分のクリーンな吐息の一部を再吸入できるマスクの形
ニュースで新型コロナウイルスに関する海外の映像を見て、アヒルの口のような大きなマスクをしている人が多いことに気づきました。アヒルの口のような形のマスクというのは、例えば下に引用させて頂いた写真のような形のマスクです。この写真の製品のマスクは医療用なので、生地もしっかりしていて予防用として使えるようですが、普通の生地でもこのような形にすれば、同じ生地で作る平坦なマスクよりも予防効果が高いのではないかと思いました。
マスクは、もし自分が気づかずに感染者となっている場合に、話をしたり咳などをしてマイクロ飛沫を飛ばさないためにはとても効果があるので必ず着用する必要があります。もしマスクをしない人がマイクロ飛沫を飛ばしてしまうと、その水分が蒸発したあともウイルスだけが空中に漂うことになります。その小さなウイルスの尺度では、写真のような医療用のマスクは別として、市販のマスクはザルのようなものなので予防のための効果はないと言われています。それでも、普通の生地でマスクを自作する場合に、この医療用の製品を参考に、形だけでも真似て作れば予防効果が少しは期待できるのではないかと思った次第です。
口に密着する平坦なマスクでは、呼吸で吸い込む空気は100%が外気からの吸入ですが、それに比べると、口元の空間が広い写真のようなアヒルの口の形のマスクは、生地の空気抵抗により吐息が一時的にマスクの中の空間に留まるので、次に息を吸うときはマスクに溜まった自分の吐息(※)も含めて吸い込むことになり、肺の中にあったできるだけクリーンな空気を一部再利用できると考えられます。従ってこの形はとても効果的だと思います。
(※ 吸い込んだ空気に含まれる酸素はすべて肺で吸収されるわけではなく、吐息の中にもある程度の酸素が残っています。)
もう少し詳しく考えると、アヒルの口型のマスクは口元に空間が確保されているので、外気をダイレクトには吸い込まずに、まずマスクの中に作られたバッファとなる空間の空気を吸い込みます。そして吸い込んだ時にそのバッファ空間に外から充填される空気の量は、呼吸の気圧変化による生地のわずかな変形でバッファ空間が小さくなるため、吸い込んだ量よりも少ない空気しか外気から充填されないことがポイントです。(例えばこれと同じ形のマスクを凹まない硬い材料で作ってしまうと、呼吸で吸い込む量と同じだけの外気がバッファ空間に入り込んでしまうため、効果は少ないと考えられます。)そして少し凹んだあと、その凹みを戻すためにバッファ空間に充填される空気は自分が吐き出す空気です。このため、肺の中は、外気との交換率が100%よりも少ない状況を保つことができそうです。(でも十分時間が経ったあとは平衡状態となり、肺の中の空気は外気と同じ汚染された空気が入り込んでしまいます。)ここまでのポイントをまとめると、1つ目は、自分が吐いた空気がマスクの中に一時的に留まるので、それを再吸入することができるということと、2つ目は、吸い込む時はマスクが凹むことによって、外気がマスクの内側に入りにくくなる、ということです。
以上のことをわかりやすい別の例えで説明してみます。粘膜を外気に触れさせないために、ビニール袋を頭からかぶって首の部分で密閉すれば予防効果は完璧ですが、これでは酸素が肺で徐々に吸収されてしまい、呼吸できなくなってしまいます。そこで、そのビニール袋に小さな穴をたくさん開けてかぶると、自分の吐き出した空気をその袋の中に戻しつつ、たくさんの穴を通して適量な外気が袋の中に補充されるので、中の酸素を維持することができます。ここで重要なことは、中の酸素が維持できるだけの、たくさんの穴を袋に開ける必要があるということです。それを見極めるのは難しいので、十分多めの穴を袋に開けることになります。そんな、穴を十分たくさん空けたビニール袋をかぶるのと同じ状態が、口元の空間を広く確保できるマスクを付けて呼吸することだと思います。ただ、ビニール袋をかぶるのと違ってマスクでは目の粘膜までは守れませんが。
この写真のような形のマスクは、ダックビルタイプ(英語を訳すとアヒルの口型)と呼ばれている商品のようで、以上のように考えるとすごく理にかなった形と言えます。これと同じものを形だけでも真似させて頂いて作れば、少しはその恩恵に預かれるのではないでしょうか。真似て作っても、個人で利用する限りは特許や意匠を気にせずに使うことができます。
繰り返しますが、自作マスクという条件で比較した場合、アヒルの口の形の方が平坦なマスクよりも少しは予防効果が見込めるというだけで、自作マスクは医療用のマスクででないことに変わりはないので、予防のために安心して使用してはいけません。アヒルの口の形でも医療用でなければ、十分時間が経ったあとは、肺の中の空気は外気と同じウイルス濃度になってしまいますので、長時間使用する場合は形によるアドバンテージはありません。
ちなみに、ナウシカのマスクも両側にバッファ空間のようなものがあるので効果的と思われます。
そしてこのアヒルの口型マスクはコーヒーフィルターの形に似ています。開く前のコーヒーフィルターの形の布を2枚貼り合わせれば、この形を実現することができます。
さらに、コーヒーフィルターの形の場合、縫い目を縦にしてマスクの縁が目の高さまで届くような高さで装着すると、鼻の凹凸の位置を避けるように覆うので、隙間も小さくなってフィット感もなかなかいいです。
もしこのマスクを薄い生地で作る場合などは、中に本物のコーヒーフィルターを入れると、フィルタリング効果が少しは高まったり、中のコーヒーフィルターだけ交換することができたり、形を保持しやすくなるなどの利点もあります。
コーヒーフィルター・マスクで検索したら、すでにたくさんの先人たちがコーヒーフィルターを使ってマスクを作っておられました。そのほとんどはコーヒーフィルターの開いているところを閉じて、逆に閉じているところを開くことによって、市販の立体型のマスクに近づけるような作り方なのですが、むしろ単純にコーヒーフィルターの形をそのまま使った方がアヒルの口型になり、口元の空間を大きく確保することができます。
このマスクの型紙を作ってみましたのでよろしければご利用下さい。
【ご注意】このマスクを付けて運動をしないでください。生地が空気を通しにくい場合は酸欠になる危険があります。また、このマスクを付けたままで眠らないでください。もし息苦しくなった場合は、生地が厚すぎるなどの理由により空気を通しにくいため使用しないでください。防水スプレーを使用すると空気が通らなくなりますので絶対に使用しないでください。