« CDやDVDなどの光学メディアの保管について | トップページ | ハトを撃退する釣り糸の張り方 »

2013年9月20日 (金)

昆虫は立体視が可能で、立体視をするために複眼を選んだ、という仮説


Banner_713x90



最近、遅ればせながらライトフィールドという技術を知り、さらに2011年ごろに発売されたLytroのカメラのことを知って感動しました。http://www.lytro.com で見られる、例えばタンポポの綿毛の写真の中で、任意の場所をクリックするとそこにピントが合います。しかも、この写真の中で、クリックしながらポインタを動かす、つまりドラッグするとそのすごさがわかります。
(なんと、この製品を解析したわかりやすい論文があります。
→ http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~kano/pdf/paper/2013%20MOC%20Lytro.pdf)

そこでこの技術を調べているうちに、トンボなどの昆虫の目は、その小さな体でも立体視ができるように複眼になっているのではないかという、あくまで仮説ですがそんな考えに辿り着きました。
立体視をするには複数の視点からの「視差」が必要ですが、人間の場合は目の間隔が6cm以上もあるので大きな視差が得られ、目が2つあれば、近くからある程度の距離までは十分に立体視ができます。この「ある程度の距離」というのは、おそらく人間が自力で動けるスピードで行動する際に不自由を感じない距離なのでしょう。そして人間よりもスピードの速いトンボでは、障害物を避けて飛んだりするためにもっと遠くまで立体視ができているのではないでしょうか。
ここで、頭の小さな昆虫は視差を大きくできないので、その小さな視差の分解能を高くする、つまり小さな範囲にたくさんの目を持つことで、その小さな範囲で見える僅かな違いや、天敵などの僅かな動きを感知することができているのではないかと思います。

ライトフィールドを応用したLytroのカメラは、直径3cmに満たない小さなレンズを通して、その内部(イメージセンサーの直前)にさらに複眼的なレンズを持ち、その一つ一つの「目」が最初のレンズから入る全ての光を記録します。なのでイメージセンサーに写る画像はそのままでは意味のないものですが(意味のないという点ではホログラムのフィルム画像のよう)、パソコン側でその画像を処理することによって、立体的な奥行き情報が生成されます。
この、パソコン側で奥行き情報を生み出す比較的簡単な処理を、昆虫の脳がアナログ的(ニューラルネット的)に行っていると仮定すると、昆虫には景色が立体的に見えているはずです。(見えるというよりも感じるのかもしれません。)
遠くから飛んできて、細い棒の先にピタッと器用に停まるトンボを見ていると、きっとそうにちがいないと思ってしまいます。

余談ですが、もし立体カメラを作るのにこのライトフィールド技術を使うとすれば、Lytroのような3cmにも満たないレンズのカメラでは、人間にとっては接写したもの(Lytroのサイトで見られるような画像)しか奥行き感を得ることはできないと思います。
それは人間の目の間隔が、このカメラのレンズの直径に対して大きいためです。ライトフィールド技術を使って、汎用の立体カメラを作るには、人間の両目を覆うくらいの大きなレンズを持つカメラが必要なのではないでしょうか。(あるいは表示する際に大画面で見ればいいのかもしれません。)これは先の昆虫の話(視差が小さくても、その中で分解能を高めればよいという話)と矛盾するようですが、人間の脳は複眼に対応した信号処理はできずに、2つの視点から大きな視差で見た場合しか立体に見えないように学習してしまっているからでしょう。

でもそのような大きなレンズを使ったシステムが実現すれば、両目を結んだラインを水平方向だけでなく縦方向にしても、立体的に見えることになります。つまり、寝転がって見ても立体的に見えるテレビが実現することになります。これは、Lytroのサイトにある先の写真において、左右方向だけでなく上下方向や斜め方向にポインタをドラッグしても、陰に隠れた部分が見え隠れすることからもわかります。
昆虫の多くは羽根を持っているため3次元的な移動ができるので、人間のような前後左右の方向の立体視だけではなくて、それに上下方向の軸が加わった立体視を行う必要があり、昆虫にはきっとそんな立体視が、あの複眼によってできているのではないでしょうか。このこともLytroのサイトの写真から推測できます。

参考文献:「ライトフィールドカメラLytro の動作原理とアルゴリズム」 蚊野 浩

2014.6.14 追記
Lytroのサイトのサンプル写真のURLが変更になっていて、今は https://pictures.lytro.com/ に沢山のサムネールが掲載されています。このうちのどれかを選択して開くと、上記のような体験(ピントの深度が変わる体験と、上下左右斜め方向の視点移動により立体感を感じる体験)ができます。

 

 

 

 

 

« CDやDVDなどの光学メディアの保管について | トップページ | ハトを撃退する釣り糸の張り方 »

サイエンス(科学)」カテゴリの記事

無料ブログはココログ